大河ドラマ 龍馬伝 幕末 古代 上杉
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戦国特に上杉家、幕末、古代、歴史を愛する日記です。時事問題も多いです。
 
じわる、パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命

「パリ市」1910-1912年 ロベール・ドロネー


「行進する兵士たち」1913年 ジャック・ヴィヨン


「収穫物の脱穀」1912年 アルベール・グレーズ

上野の西洋美術館で開催中の、『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命』を、家族で鑑賞して来た。

キュビズムって何よ。
キュビズムはご想像通り、「立方体」が語源である。
20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックと言う両巨頭の芸術家によって生み出された芸術活動である。
これが、西洋美術史に革命的な変革をもたらしたのである。
ジョルジュ・ブラックの描いた風景画が、「キューブ、立方体」と評されたことからキュビズムと呼ばれた。
それまで西洋画と言えば、遠近法や陰影を駆使し、目に見えた通りのリアルな表現を用いていた。
それが、平面的で幾何学的なパーツで絵画を構成することが行われたのである。
これは、ルネッサンス以来の美の革命となった。
パリに集まる若き芸術家たちに衝撃を与え、現代にいたるまでデザイン、意匠に発展して行く。

確かに、タイトルを見ないと何を描いたのかわからない絵もある。
タイトルを見ても判別の難しい絵もある。

いろいろ見て美術館を後にした。
画家が描こうとするテーマが見事な配色で表現され、脳裏に残像になって忘れられない。
見る者に、伝えたいテーマを絞り込み極限まで削り配色をすると、こうなる。
画家のほとばしる情熱、色を選択する冷徹なまでの判断力。
そして、そこから生まれる圧倒的な色彩の力。

これを見た者は、これを飾りたいと思うし、その絵が飾られた空間に身を置きたいと思う。
そう言う作品の数々である。

【2024.01.20 Saturday 19:22】 author : いづな薫 
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栗山ノート


最近読んだ本で、感銘を受け且つ元気が出る本をご紹介します。
WBCの名監督で、現在は学校法人北海学園特任教授も務める栗山英樹さんの本です。
最近は第二弾も出ていますが、これは第一弾の方です。

WBCを見ていて、”栗山監督は好かれている”と多くの人が感じたと思います。
どうしてあれまで慕われるのか知りたくなり、この本を手に取りました。
謎は十分解けました。
栗山監督は元プロ野球選手ですが、メニエール病を発症し引退を余儀なくされます。
その後、監督として務めますが、様々な選手と出会い試合を経験しながら得て行く人生哲学が心に残ります。

私心を失くし、謙虚さ、献身。
自分の利益より周囲の人の心を大事にする。
徹底的に私心を失くす自己犠牲精神は聖人のようです。
彼は、人に対する惜しみない愛情に満ちている人物だとわかります。
道、徳、仁、義、礼について本文で栗山監督は語っています。
実現することが極めて難しいこの言葉を、自己の試合の時、はたまた信長の桶狭間の戦いに当てはめて語っています。

野球人としてだけでなく、歴史書や歴史上の偉人たちの言葉を深く読み込み、野球に人生に活かして来た栗山監督の言葉は非常に重みがあります。
スポーツ本と言うより、人生哲学、哲学書に近いです。
まあ、読んでみてください。
元気が出ます。

特に心に残った、栗山監督の言葉を2つ。

私心が入り込んだ瞬間、人は誠を尽くせなくなります。
誠を尽くしていると勘が働きます。
変化に鋭敏になる。


人生は捨てたものではありません。
私はあなたの人生を本気で応援しています。


【2023.10.25 Wednesday 14:42】 author : いづな薫 
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芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル
「芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル」三菱一号館美術館を家族で見て来た。
美術展が好きで、かなり頻繁にいろいろ足を運ぶ。
レビューを全部書けるわけではないが、時間がある時は書き留めたい。

開催期間は既に終わっていて、三菱一号美術館は現在建物メンテナンス中である。
この建物自体が、1894(明治27)年、英国人建築家ジョサイア・コンドルによって設計されたものである。
1968年、老朽化のため解体され、元の建材も使って復元されたのが現建物である。
で、展示物は、江戸末期・明治時代に活躍した落合芳幾(1833〜1904)と月岡芳年(1839〜1892)の作品である。

まずは、謙信公ファンには超有名なこの絵。芳年の作品「弾正少弼上杉謙信入道輝虎」
暗雲たちこめる不穏な空、地響きが聞こえそうな土煙。その切れ間から忽然と現れた、
英雄・上杉謙信。その姿を切り取った芳年の名作である。




芳年「藤原保昌月下弄笛図(ふじわらのやすまさげっかろうてきず)」 



藤原保昌(ふじわのやすまさ)とは、平安時代の貴族で、道長四天王と言われた人物である。
武勇と和歌、音楽に優れた平安時代のスーパースターである。特に笛の名手である。
しかも、妻は平安時代きっての歌人あの和泉式部である。実に華やかな人生。
その藤原野保昌が笛を吹きながら歩いていると、盗賊の袴垂(はかまだれ)が彼を襲撃しようとしたけど隙が無く出来ない、と言うシーンを描いたのが上記である。
芳年屈指の名作。
袴垂(はかまだれ)、私が子供の頃から読んでいた昔物語の中に幾度も登場した。
そう、「今昔物語集」や「宇治拾遺物語」をお読みなったことがある方にはお馴染みの盗賊である。盗みをして投獄されたが、恩赦で出獄した。
都の夜道を歩いていた藤原保昌を襲撃して失敗する。
藤原保昌は、逆に袴垂(はかまだれ)に着物を与えたと言う。かっこよすぎる。笑
来年の大河ドラマで、藤原保昌役は誰だろう?袴垂(はかまだれ)は?


芳年「主計頭加藤清正(かずえのかみかとうきよまさ」



加藤清正が、論語を読んでいると、ペットのサルが清正の筆を持ち、本を汚してしまう。
清正は、サルちゃんを叱らず、「そんなに勉強がしたいか。」と頭を優しく撫でたと言う。

【2023.04.21 Friday 10:20】 author : いづな薫 
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カモメに飛ぶことを教えた猫


世界的ベストセラーの、「カモメに飛ぶことを教えた猫」ルイス・セプルベダ作を読んだ。
いたく感動したので、文章にして残したい。

主人公はドイツハンブルクの港町に住む、黒猫のゾルバ(オス)である。
港町の猫で、親切な男の子に拾われ何不自由なく毎日美味しいものを食べのんびり暮らしている。
その彼の生活が、ある日一変する。

黒猫ゾルバの住居のバルコニーに、空からカモメが降って来た。
カモメは、具合が悪そうだ。
人間がタンカーから捨てた重油がべっとりと体に付き、瀕死の状態である。
毛穴が詰まって死ぬか、餓死を待つ状態であった。
黒猫ゾルバは、瀕死のカモメを助けようと重油を舐めとろうとする。
しかしカモメはもう自分は助からないだろうから、最期の願いを聞いて欲しいと言う。
瀕死のカモメの願いは、3つ。

1)自分は最後の力を振り絞って卵を1個生むから、食べないで欲しい。
2)その卵を育てて欲しい。
3)孵った雛に、飛ぶことを教えて欲しい。

黒猫のゾルバは、猫の名誉にかけて約束を守ることを誓う。
死んだカモメから託された卵を、ゾルバは食事とトイレ以外抱き続ける。
チンピラ猫どもが、その姿を見てバカにする。
何日で孵るかわからない卵だったが、ある日、卵が自発的に動いて、口ばしがズンっと出て来た。
中から白いヒヨコが生まれ、「ママ―!ママー!おなかすいた!」といきなり騒ぎ始める。
自分のメシは食ってしまったし、さて困ったゾルバ。
リンゴを1個持って来たがひよこが食べられるわけもなく、「おなかすいたー!」と怒って泣く。
ゾルバは鳥は虫を食べるだろうと、ハエを5匹獲って、ひよこに与えると満足そうに食べた。

ひよこを美味そうな餌としか見ない、チンピラ猫どもやネズミたちからゾルバは必死に守る。
ひよこが「ママ強い!!」と、オス猫のゾルバに言うのが笑える。
好物のイカをたらふく食べて、ひよこは美しいカモメに成長して行く。
カモメはメスで、黒猫ゾルバの娘としてフォルトゥナータと名付けられた。
フォルトゥナータは、イタリア語で「幸運」を意味する。
卵から育て、ゾルバはフォルトゥナ−タの亡き母との約束を2つまでは果たした。

しかし、3つ目が難問だった。

フォルトゥナータに、飛ぶことを教えること。
ゾルバは、猫なので飛んだことがない。
ゾルバには気心の知れた猫仲間の助けも借りて、フォルトゥナ―タに飛ぶ練習をさせるが墜落してしまう。
フォルトゥナータ自身も、自分は猫に育てられた”猫”なので飛ぶ気がなかったのである。

そんな時、フォルトゥナータに、「鳥である君を猫が大事にしているのは、いずれ食べるつもりだから」だと吹き込む奴がいた。
フォルトゥナータは、ショックを受け飛ぶ練習をやめてしまう。

ゾルバは、フォルトゥナータに「君は、カモメとしての人生を全うしなければならない。」と教える。
それが出来れば、カモメが猫を思う気持ちも、猫がカモメを思う気持ちももっと価値あるものになると教える。
自分と似た者同士は気心が通じやすく、そうでない者同士は難しいからである。
種を超えた愛情はより価値があると、ゾルバは娘に教えたのである。

フォルトゥナータに飛ぶことを教えるため、ゾルバが取った行動は…?

ラスト、フォルトゥナータは大空を舞いながら、「あなたのことは決して忘れない。他のみんなのことも」と言う。
黒猫ゾルバは、飛ぶことを覚えた”娘”フォルトゥナータを見上げてつぶやく。

飛ぶことができるのは、心の底からそうしたいと願った者が、全力で挑戦したときだけ

この物語は、様々な教訓と感動が込められている。
種の違いを超えた親子愛、友情、そして努力することの大切さ。
努力によって到達したその先には、確実に違う世界が広がっている。

この小説の作者ルイス・セプルペダ氏はチリ生まれでドイツで活動した作家である。
大変残念なことに、2020年コロナ感染後に亡くなった。
カモメと猫の異種交流は、地球上の人類たちを表していると感じた。
国籍、主張、文化が異なった人々がどうしたらうまくやって行けるか。
違いを尊重し、慈しみ合うことが出来るか、私たちに深い問題を提起している。

南米チリ生まれの作者セプルベダ氏が、この小説を書いたのは、ドイツの南西部黒い森地方のラウフェンブルクと言う町である。
国境を接するスイスにも、ラウフェンブルクと言う町がある。
ナポレオンにより分断され、一つの街が2つの国に分かれて存在するのである。
ラウフェンブルク、私が暮らした村から車でわずか1時間の距離である。
幾つもの国の国境が近いこの地域では、民族の分断と融合を繰り返して来た歴史がある。
そのような土地では、争いの歴史、主義主張の違いを否応なく考えさせらる。
如何にしたら、争いなく心を通わせることが可能かを模索することになる。
違いを認め、互いに平和に暮らして行く落し所を見つける。

冒頭で述べたように、この小説は世界的ベストセラーである。
動物たちは軽やかで、ユーモアたっぷりで、困難な問題に立ち向かう我々人間たちに、癒しと解決方法を教えてくれている。
皆様にも、ぜひお読みいただきたい。

【2023.04.01 Saturday 08:42】 author : いづな薫 
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ピカソとその時代
『ピカソとその時代』を、国立西洋美術館で見て参りました。


「座るアルルカン」
製作年代は1905年。ピカソの「バラ色の時代」と呼ばれた時代。ピカソは、道化師や旅芸人を情熱的なバラ色で描いた。バラ色でありながらどこか寂しげなアルルカン(道化師)は、故郷を離れ旅をしながら芸をするアルルカンの心境を現したか。アルルカン(仏語)は即興喜劇の道化師であり、イタリア語でアルレッキーノ。 英語でハーレクインである。


「緑のマニキュアをつけたドラ・マール」
写真家、画家のドラマールはピカソの恋人だった女性。ピカソがゲルニカ作成の時、1カ月に渡りその様子を撮影している。


「黄色のセーター」
年代によって画風が変わったピカソ。晩年には、見た通りには描かず、考えた通りに描くキュビズムを確立。多角的に見た物の形を一つの絵の中に収める画法。


「大きな横たわる裸婦」
ナチスドイツ占領下で描かれた作品。美も官能のかけらもなく、冷たくごつごつとした画像。戦争の絶望、苦しみが感じられる。ピカソに限らずあらゆる芸術作品はその時の時代世相に大きく影響される。戦争の悲劇、苦悩はその傷跡として芸術作品に長く記録されている。


「サーカスの馬」
有名なゲルニカの数カ月後に描かれた作品。ゲルニカはスペイン内戦の犠牲者を牛馬で表現している。 サーカスの馬と名付けられたこの絵は、凄まじい形相の男が馬を引き、見物人の形相も左の1名を除き不気味だ。


「ジンジャーブレッドの絵」
これは「色彩と線の魔術師」と呼ばれたパウル クレーの作品。手芸のパッチワークのような見た目ながら、焼けた美味しそうなジンジャーブレッドが感じられる。当初作者のクレーはこの作品を「植物の祭り」と名付けた。植物がイメージ画像で描かれているのが特徴である。


【2023.01.18 Wednesday 14:21】 author : いづな薫 
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兵馬俑と古代中国
上野の森美術館で開催中の『兵馬俑と古代中国』を見て参りました。

秦の始皇帝(前259年2月18日〜前210年9月10日)の陵墓の西側から、馬車が2両見つかっている。



1つは御者が立ち姿で操縦する立車と呼ばれる車両で、御者が正座して操縦するのが安車と呼ばれる。 下は安車の複製。


4頭立て馬車で、馬具を付け横木で連結されている。

兵馬俑の「俑」(よう)とは、墓の副葬品として作成された人形を指す。殉死者の代わりに墓所に入れられた。
古代中国において、トップが死ぬと何十人〜200人近い殉死者が出ている。
優秀な家臣が死ぬと、国が弱る。
始皇帝の墓陵に入れられた兵馬俑は、8000体。極彩色に彩色されていたが、空気に触れると退色したと言う。

彩色を再現した像。

立て膝をつく兵士、高位の武官、弓をつがえる兵士、等身大で、一つとして同じ顔はない。
等身大の兵士の身長は、177cm〜188cmくらいありかなり長身である。馬も現代の馬のように大きい。





【2023.01.15 Sunday 08:51】 author : いづな薫 
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古美術逍遥


東京六本木の泉屋博古館に、古美術探訪に行って来た。
財閥であった住友家が集めたコレクションの中から、特に東洋美術に限定した展示である。
国宝2件を含む約80件を拝見出来る。
伊藤若冲の「海棠目白図かいどうめじろず」は、”目白押し”の語源となっためじろがぎゅうぎゅうと枝に並ぶ可愛い絵。

さて、中国絵画には一つの価値観がある。
それは、”美術品作者の人格によって作品の価値が決まる”、と言うもの。
住友家が集めた、気品ある中国絵画の数々である。
一気に描いた墨の濃淡が、作者の静かな覚悟と情熱を感じる。

茶の湯関連の美術品もいくつかあった。
私自身茶道をたしなむこともあり、特に気になったのが、「小井戸茶碗 銘 六地蔵」(朝鮮時代)と言う名の茶碗である。上記写真チケット左上の茶碗がそれである。
数寄者・小堀遠州(大名で庭師のイケおじ)が伏見の六地蔵で見出したという、名器である。
私はかつて、伏見の六地蔵を尋ねたことがある。
京都の伏見にあるが、9世紀に小野篁(おののたかむら)が 熱病で死にかかり 冥土へ行った。
そこで地蔵尊に会い、またこの世に帰って来た。
そして、1本の木から6体の 地蔵菩薩を刻み現在の伏見六地蔵に納めたのが由来である。
小野篁(おののたかむら)、この世とあの世を自由に行き来することで有名な人物である。

小野篁(おののたかむら)から約800年後、小堀遠州が、六地蔵で朝鮮渡来の名器に出逢った。
それを、遠州は常に愛用していたと言う。
住友家12代当主が大変な値段で購入したため、住友家で問題になり、陽の目を見なかったと言ういわくつきの茶碗である。

会期は10月23日まで。




古美術を楽しんだ後は、ケーキとコーヒー。
ご一緒したお友達のHos様がご馳走してくださいました。本当にご馳走様です。
美しい美術品と美味しいスィーツ&コーヒー、幸せな一日をありがとうございます。

【2022.09.22 Thursday 17:00】 author : いづな薫 
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『かあさんは どこ?』クロード・K・デュボワ著


コロナが爆増しているのと、住宅リフォームデザインを決めるため、今年のお盆は在宅して本を読んでいました。

8月12日は、37年前日航ジャンボ機が墜落した日である。
私は、毎年8月12日がめぐって来る度、いやその他の季節もこの”事件”が気になっている。
幾度も関連の本を読んだ。出版されているのはほとんど読んだだろう。
事故でなく、”事件”の疑いが濃厚である。
しかも、生まれる前の子供も含めると、死者521人重傷者4人の大事件である。

黒い煙を吐く傷ついた123便の後を追う、謎の2機の戦闘機。
この戦闘機に関する、有力な目撃情報がいくつかある。
非番の自衛隊隊員まで目撃しており、機種まで判明している。
しかし、政府事故調も自衛隊もこれを認めていない。
飛行機事故で墜落の直接原因は、墜落1分前に起きる。
日航123便は、羽田を飛び立ち、伊豆河津上空で爆発音が起き、その後32分も飛行している。
おそらく、不時着出来る方法はあったはずで、機長らもそれを必死に探っている形跡がある。
それを妨げたのは何か。
墜落するほんの少し前、123便の後ろから流れ星のような物が飛行機に向かって空を走るを目撃した人が幾人かいる。

私は、この”事件”が頭から離れない。
平穏な旅をするはずだった人びとが、巻き込まれた”事件”である。
それは、誰しも遭遇する危険がある。


そして、写真の本の中で、一番心に残ったのは、『かあさんは どこ?』である。
絵本を描いた、クロード・K・デュボワさんのお母さんの実話である。

主人公である幼児(デュポアさんの母、当時5歳)のいる街が、戦争で突然、爆撃される。
恐ろしい音がどんどん大きくなって、近づいてくる。
家は、破壊され、幼児はただ一人取り残された。

「かあさんは どこ?」と探すが見つからない。

守ってくれる大人はおらず、爆撃の中を一人で走り、走り続けて逃げる。
突然大きな手が、幼児の手を掴み、一緒に逃げてくれた。
しかし、大きな手の大人についていけず、取り残されてしまう。
死体の転がる街を幼児はひとりで歩く。
知らない母子の母親が、抱き寄せて眠ってくれたこともある。
幼児は、ドイツ兵に捕まり収容所に収容された。
そこでは、わずかな食べ物をもらう代わりに水くみの仕事をさせられる。
幼児は仕事を終え、拾った人形を抱いて、収容所の地べたでうずくまるように寝ている。
やがてドイツ兵はいなくなり、幼児は「逃げるなら今!」とひとりで逃亡を決断する。
走り続けて、逃げた後、子供を抱いたおばあさんが幼児の手を引いてくれた。
寒さに耐えながら、幼児はどこまでもどこまでも歩いていく。

ラスト、この幼児は母親に会うことが出来た。
しかし、親に会えなかった子供も沢山いただろう。
身を守るすべも持たず、親から引き離され戦争に翻弄されて行く。
幼児の目線で描かれているので、歴史上の戦争の記録は詳しく書かれていない。
しかしそれが逆に、とても弱い立場の幼児が理不尽な暴力と飢餓に翻弄されるのがよく伝わる。
スケッチのような軽いタッチで描かれる挿絵と、短い文章、そして大変な緊迫感。

ぜひ皆様にもお読みいただきたい。
このお話は、第二次世界大戦中のことである。
今なお、戦争がこの世から消えないことに、後世を生きるものとして私は重大な責任と悲しみを覚える。



私が読む本は、ノンフィクションが多い。
政治にからむ物も多い。私は常に真実を知りたいと思っている。
重たいテーマを読むことが多いが、料理本なども読む。

【2022.08.22 Monday 13:24】 author : いづな薫 
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THE HEROES 刀剣×浮世絵 
『THE HEROES 刀剣×浮世絵』に行って参りました。
 この展示、私が行ったのは先月東京会場ですが、今は新潟県立万代島美術館、その後静岡、兵庫と巡回します。



「伏木隠れ図鍔」
鎌倉殿でもこのシーンがありましたが、治承4年(1180)源頼朝は、石橋山の合戦で敗れ、主従7騎でしとどの窟屋に隠れます。
そこへ、敵方の梶原景時がやって来て、隠れている頼朝を見つけました。
梶原景時は弓の先で穴倉を探り、蜘蛛の巣ばかりで何もないと味方にうそをつきます。
頼朝は命拾いをし、あとで御家人に加わった梶原景時を重用します。
その決定的シーンを小さな鍔に刻んだ、銘品です。19世紀の作品




こちらは、「金象嵌銘 光忠」13世紀
身幅広く、猪首鋒(いくびきっさき)堂々たる姿の光忠です。
光忠は長船派で、長光の父で景光のお祖父さんです。戦国時代には織田信長が愛した屈指の名工です。
金象嵌とは、無銘になった刀を極めて(鑑定して)、刀工の名前を入れたものです。
刀剣を鑑定し結果を紙に書いて二つに折りにします。
確かなことを「折り紙付き」と言いますが、これが語源です。
安土桃山時代に、本阿弥家(ほんあみけ)がこの折り紙(刀剣の証明書)発行を許されていました。

さて、この時代二大巨頭だったのは長船派と福岡一文字派です。刀剣生産地も双方備前国で近いです。当時の備前国の刀剣の隆盛ぶりがしのばれます。
一文字派は、山鳥毛に見られるような鎬(しのぎ)まで届くような豪華な重花丁子(じゅうかちょうじ)や大丁子を焼いていました。
この光忠の特徴は何と言っても、蛙子丁子(かわずこちょうじ)です。蛙の子、つまりオタマジャクシみたいな柄です。
頭が丸い丁子や互の目が交じり、バラエティ豊かな刃文で絢爛豪華です。
蛙子丁子(かわずこちょうじ)は福岡一文字派の焼刃の大きな特徴でもあり、この辺り一帯で鎌倉時代に、華やかな刀剣が多く生産されていました。







刃文を一目見ただけで、「長光」と分かる銘品。
刀剣が、”私は長光”と言っているようだ。
これが普段米国にあり、今日本がレンタル中とは。
謙信公が、川中島に持って行った逸話のある小豆長光の作者長光である。小豆長光は存在しないが。
この展示されている長光、小板目の鍛えに乱れうつりが見事。
匂い出来の丁子乱れに互の目(ぐのめ)が交じる。
これは若い時の作品だろう。
長光の作品は現存数が多く、30年間におよぶ制作年間の作品が残っている。

【2022.04.15 Friday 10:56】 author : いづな薫 
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お正月読書


新年あけましておめでとうございます。
今年も皆さまにとって、良い年でありますよう祈念いたします。

年内に、黒豆、きんとん、なます、酢だこ、ローストビーフを作りましたので、お正月は読書を楽しみます。
黒豆煮ようと、著名料理家のレシピ見たら、8時間煮ると書いてあり、本でも読みながら煮るか、と思ったら、
1時間50分で出来てしまいました。
ウソのように柔らかく美味しいです。
豆は、年によって固い柔らかいが違うそうですが、それにしても早いです。
ちなみに丹波の黒豆を使いました。

読みたい本がたまっています。
本屋さんに行ったら、大河ドラマに影響があって鎌倉時代の本がたくさん出ていて嬉しかったです。
これらを読みます!
武士が台頭して、名刀をたくさん生んだ時代でもあります。

【2022.01.01 Saturday 10:33】 author : いづな薫 
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